「世界一わかりやすい在庫削減の授業」
を読んだので、内容の軽いまとめと雑感など。
前提として、筆者は流通や在庫管理といった分野に関する事前知識は無いので、その視点からのまとめとなる。
概要まとめ
1限目 くさった在庫は捨てよう
- 全ての商品には賞味期限がある
- 生鮮食品と同様に、TVや本といった物理的には腐らないものにも賞味期限がある。本は発売から二ヶ月程度で売れなければ返品されてしまうし、電化製品は次の型が出たら型落ち商品としてセールする羽目になってしまう。
- 在庫保有日数を計算してみる
- 在庫保有日数=「今の売れ行きがコンスタントに続いた場合に、現在の在庫を売り切ることが出来る日数」
- 例えばサンマ150尾を仕入れた時に、一日に100尾ずつ売れる場合、在庫保有日数は150/100=1.5で1.5日となる。サンマは1.5日程度であれば保つので、これは適正な在庫保有日数と言える。
- だが、これが仮に一日に20尾しか売れない場合、150/20=7.5日となり、サンマは3日程度で腐ってしまうので、不適切な在庫保有日数となる。
- 自社の在庫保有日数が業界平均や理想的な状態と比較してどういった状態であるかを把握する必要がある。
- 在庫の維持にかかる費用を計算する
- 倉庫の場所代・人件費・支払い利息など在庫に関連する費用を計算し、現状の在庫維持のためにかかっている費用と、在庫削減に成功した場合に削減できる費用を算出する。
- 不良在庫を破棄する
- 物理的な破損・型落ち等で商品価値が無くなった在庫を処分する。
- いつか売れるからとっておこうという思考では、ずっと在庫維持関連費用を払い続けることになる。
2限目 売れているものと売れていないものを分けよう
- 品切れを起こさないことが原則
- 車やブランド品でも無ければ、消費者は在庫がある場所で購入する。品切れを起こすことは販売の機会を逃すだけでなく、店のイメージ低下にも繋がる。
- 「売れ筋商品」と「死に筋商品」に分ける
- 自社の製品を、次々売れている売れ筋の商品と、たまにポツポツ売れている程度の死に筋商品にわける
- 売れ筋の商品には手間をかけて毎日売れ行きをチェックして必要に応じて発注をかけるが、死に筋商品は事前に決めた個数を下回ったら追加発注をかける程度とし、手間を出来るだけかけないようにする
- 80:20の法則に従って売れ筋・死に筋を判定する
- 売上高順に製品をソートして積み上げグラフを書いた時の、①売上高の上から80%を占める商品群、②80~90%を占める商品群、③90~100%を占める商品群に分け、発注にかける手間にメリハリをつける
- ①の商品は売れ行きを予測して発注、②の商品は一定の在庫を下回ったら発注する、など。
3限目 売れる商品には手間をかけよう
- 売れ筋の商品には「予測方式」を、一定の条件を満たす商品には「かんばん方式」を用いて発注を行う
- 予測方式
- 定期的に発注を行い、発注の度に現時点での在庫や売れ行きから発注数を決定する。
- 今回の注文数=次回注文の入荷日までの予測販売数-注文時点での在庫数-前回注文分の入荷予定数-念の為在庫
- 念の為在庫=統計的に100回に一回しか品切れが起き得ない数への調整数
- かんばん方式
- 以下の条件に当てはまる場合に適用すると良い。かんばん方式を使うことで、在庫数を週一回/月一回の注文と比較して格段に抑えられる。
- 毎日平均して売れる
- 注文する商品はどこでも扱われている
- 毎日必要なだけの注文数に応じてもらえる
- 毎日注文して毎日配達してもらえる
- 注文から入荷までの日数が短い
- 以下のフローで行う
- 事前にかんばん一枚あたりの購入数を決定する
- かんばん枚数を決定する
- かんばん枚数=( 注文から入荷までの日数+1)×一日あたり消費数/かんばん一枚あたりの数
- かんばん枚数分の初期在庫を購入し、かんばん一枚あたりの購入数ごとにまとめ、かんばんを付ける
- 3で作成したまとまりを順番に販売していく。まとまりから最初の商品が売れた時点でかんばんを剥がし、注文を行う。
- 以下の条件に当てはまる場合に適用すると良い。かんばん方式を使うことで、在庫数を週一回/月一回の注文と比較して格段に抑えられる。
4限目 売れ筋以外は手間をかけずにいこう
- 2限目で②の群に入った商品に対してはボーダーライン方式、③の群に入った商品に対してはツーボックス方式で在庫管理を行うと良い。
- ボーダーライン方式
- 在庫の数量が一定(発注点)を下回ったら注文数を決定し、発注する方式。
- 発注点の決め方
- 発注点=注文から入荷までの日数×一日平均販売数+念の為在庫
- 注文数の決め方は後述。
- ツーボックス方式
- 商品をある個数でまとめた塊を2つ用意しておき、そのうちの1つから販売していく。1つの塊全てを売り切ったらある個数分発注する。これを繰り返す。
- かんばん方式よりも商品発注のサイクルが長くなるため、発注サイクルが長くても問題のない商品に適している。
5限目 トラブルに強い在庫削減の方法
- 実際の在庫数とコンピュータ/帳簿上の在庫数の乖離を発生させない
- 倉庫担当者のミスによって実際の在庫数と帳簿上の在庫数が一致しないことは容易に発生し得る。こういった状況を作らないためのシステム導入やオペレーション規定の策定が重要。
6限目 入荷条件の「当たり前」を見直す
- 予測方式、ボーダーライン方式、かんばん方式のいずれにおいても、発注から納品までの日数を短くし、一回の注文あたりの発注数を少なくすることで在庫数を抑制することができる。
- 上記を実行するため、取引先との交渉や変更を行っていく。
7限目 本当の売れ行きをつかもう
- 自社製品を直接消費者に販売しておらず、間に卸売業者や小売店が入っている場合、それらの場所に流通在庫が存在することになる。
- 実際の消費が停滞期に入っていたとしても、小売店等からの発注が続いていた場合は停滞期を察知出来ずにそれまで通りのペースで生産してしまい、結果として過剰在庫を抱えることになってしまう。
- こういった自体を避けるため、実際の消費の動向を敏感に察知することが必要。
- 上記の対策として、こまめな出荷で流通在庫を削減したり、POSデータの情報を取得したり、消費者への直接販売を行う。
8限目 今までと違った形で在庫を持とう
- シュークリームで言えば味違い、電化製品で言えば色違いなど、材料の大部分は同一であるが一部分が異なる商品の在庫を全て完成品で持つことは、過剰在庫や品切れを発生しやすくする。
- 商品間で共通の部品の状態で在庫を持っておき、注文に応じて組み立てを行うことで、需要に応じて柔軟な供給が可能になる。
- 上記を行うためには以下が必要。
- 自社での商品組立を行うための体制作り
- 注文受付から出荷までのタイムラグの削減
- 商品設計時点での仕様標準化の取り組み
9限目 身近なコンビニに見る在庫削減
- セブンイレブンでも、1~8限までで扱った内容が行われている。
- 1限目:賞味期限・消費期限が近くなった商品は棚から撤去・廃棄される。
- 2限目:売れ筋のおにぎりとそうでもないその他の生活用品等では在庫管理の手法を変えている。
- 3限目:売れ筋のおにぎりに関しては毎日次の日の売上を天候やイベントの有無も勘案して予測し、発注している。
- 4限目:おにぎりほどの売れ行きでない雑貨に関してはボーダーライン方式での自動発注とし、在庫管理の手間を削減している。
- 5限目:売り場面積が限られており在庫数の把握が容易、かつPOSシステムも使用。
- 6限目:一日に複数回の配送を行う。また、商品の温度帯によって配送頻度を変更。
- 7限目:POSシステムの情報は本部が一元管理。また各店舗からの発注は本部を通じて直接工場に接続。
- 8限目:おにぎりやお弁当は自社の専用工場で生産。外部の工場で生産しているパンは予め日持ちがするように設計。
雑感
発注点や発注数の決定、売上予測にもっと進んだ統計学を用いたり、散らばったデータの収集に手を尽くすことでもっと効率的な在庫管理が可能なのではないかという可能性を感じた。
本書自体はかなり読みやすい、というか若干内容が薄い気がしたが、入門編としては良かった。